近くて遠い、歯科と社会
食べること。笑うこと。話すこと。歌うこと。食いしばること。歯は生活に関わる様々な機能を持つ、とても大切な臓器です。しかし、虫歯や歯周病といった歯科疾患は令和の現在も根絶することが難しい感染症であり、誰もが戦わなくてはならない生活習慣病でもあります。しかし、日本において歯の健康に関する教育体制が不十分なため、その予防方法について十分な知識を備え、実行できている人はごく僅かです。一方で、本来教育を任されている歯科業界は、民間からの歯科教育に対するニーズやそれに対するリターンがほとんどないためか、教育にリソースを割こうとする人がとても少ないです。
「歯医者は痛くて怖い場所。」そんな古臭いマイナスイメージが未だに先行し、みなさんにとって歯科は遠い存在になっていないでしょうか?麻酔の技術の発達、型取りのデジタル化、医療倫理の改善など、現代の歯科医療は日々進歩しており、一昔と比べて格段に快適な治療が出来るようになってきているはずです。近くて遠い、歯科と社会。その間にあるギャップを埋める存在が今こそ必要ではないでしょうか。
将来への不安を、磨いて落とす
65歳以上の人口の割合が全人口の約29%を占める「超高齢社会」の日本を生きる私達にとって、自立した生活を送れる期間である「健康寿命」の延長は重要な課題です。中でも歯の健康は、生活の質を大きく左右するものです。ビジネス雑誌「プレジデント」で2019年にシニアの方を対象に行われたアンケート「人生後悔ランキング」健康部門では、運動や食事、頭髪ケアなどを抑えて「歯の定期検診を受ければよかった」が1位にランクインするなど、歯の健康への関心は年齢が高くなるほどに高まっていきます。年金や医療費などの問題で将来への不安が高まるこの時代において、「歯の健康」への不安を軽減する事はとても重要です。これからの時代を担う若い世代の人たちために、私達が今持つべきもの・・・それは、「歯の守り方についての教育を十分に受けていない」という自覚と、「自分たちの歯を自分たちで守る」という強い決意です。そのために必要な情報共有とトレーニングを、私達ハミガキ団が行います。
解決したい問題(患者さん視点)
1.歯の守り方を教わるチャンスがない
現在、歯の大切さや守り方について学校で子どもたちが十分に知る事が出来る機会は、カリキュラムの都合上とても限られています。現状、歯の健康に関する教育は個々の歯科医院で行うことになっていますが、保険制度が中心の日本では一人あたりの診療時間が少なく、十分な教育を行える状況でもありません。インターネットにはこれだけ情報が溢れているにも関わらず、不確かな情報も多いため、私たちには自分の歯の守り方を正しく教わるチャンスがほとんどないのです。
2. 歯医者さんに気軽に会えない
今現在、私たちが歯科医師や歯科衛生士と会える場所は、主に歯科医院と歯科検診です。でも歯医者に行くのって怖いですよね。予約も一杯でなかなか取れなかったりします。勇気を出して歯医者に行っても、健康保険のシステム上、一人の患者さんの予約時間はだいたい15分から30分程度が限界です。ましてや学校や職場の歯科検診は流れ作業で、話をする余裕なんてほとんどありません。誰でも歯医者さんと気軽に会える、気軽に相談が出来る、そんな学校の「保健室」のような場所が社会にあっても良いのではないでしょうか?
3.良い歯医者が見つからない
「良い歯医者」が見つからないというのはとても難しい問題です。なぜなら、人によって「良い歯医者」の定義が異なるからです。歯科医療従事者も人間なので、人によってそれぞれ相性があります。技術は大前提として必要ですが、人間としての相性もとても大切です。一人ひとりにとっての「良い歯医者」を見つけるための機会を作ることはできないでしょうか?
解決したい問題(歯科業界視点)
1.歯科における教育の仕事の不足
私たち歯科医師や歯科衛生士は、歯の健康に関する知識や技術を持った専門家です。もちろんクリニックでは教育も行うのですが、教育に対しての保険点数等のインセンティブがほとんどないため、時間が十分に裂けていない現場が多いのが実態です。しかし、オーラルケアに関する知識は生活や健康に直接関わる重要なものなので、知らないでは済まされません。もし私たち歯科医師や歯科衛生士に、クリニック外での教育や生活指導に特化した働き方の選択肢が増えれば、より多くの人に歯の守り方を伝えられるのではないでしょうか?
2.仕事の充実感の不足
私たち歯科医療従事者にとっても、現場でのコミュニケーション不足は深刻な問題です。本来我々にとって、誰かと歯科医療についての話をするのはとても楽しいことです。しかし、今の日本の歯科医療の骨組みとなる保険診療のシステムは、一日何十人もの患者を診るように設計されています。これではなかなかコミュニケーションに多くの時間が確保できず、「歯を削られた」「歯を抜かれた」など、必要性を理解して貰えないまま治療が進みトラブルが続く…。そんな環境で働いていらっしゃる少なくありません。こうした現場では、仕事の充実感が不足しているのも事実です。歯科衛生士の高い離職率(50%以上)も大きな問題です。
3.病院・介護の現場の歯科の人手不足
病院や介護施設などの現場でよく聞かれるのが、歯科の人材不足です。患者さんや施設の利用者の口腔ケアは、入院中・入所中の健康管理、そしてQOLに関わる重要な仕事です。訪問歯科を行うクリニックが増えてきてはいますが、2020年に日本歯科医師会がおこなった要介護高齢者に対する調査では、歯科治療や口腔ケアが必要である高齢者が全体の約6割を占めるのに対して、実際に診療できている割合はわずか2.4%に留まるという結果も出ています。少しでも多くの方に適切な口腔ケアを行うためには、歯科スタッフだけでは限界があります。コメディカルの方の歯科臨床教育も必要なのではないでしょうか?
【VISION – ビジョン】
自分の歯の健康を自分で守れる社会の実現
わたしたちには、歯の守り方を知る権利があります。しかし、今の日本には歯の健康に関する教育システムが確立されておらず、子どもたちの歯の健康教育は家庭環境や親の健康リテラシーに大きく左右されてしまっています。ハミガキ団は、日本における「歯の健康の教育格差」の問題に取り組み、すべての人が自分の歯の健康を自分で守れる社会の実現を目指します。
【MISSION(目的)】
①歯の健康を守る民間のリーダーの育成
歯を大切にする事は、自分を大切にすることです。大人たちが自分たちの歯の健康の価値とその責任に目覚め、自分たちの歯を守るという強い意思を持つことが出来れば、子どもたちが将来後悔しない世界を作る事が出来るのではないでしょうか。ハミガキ団は、歯科と社会の垣根を超え、歯の健康を守る民間のリーダーを育成します。今の日本に必要なのは、歯の健康増進を目指す事のできる民間のリーダーです。医療従事者、経営者、学校の先生、親など、あらゆるコミュニティーの健康管理に責任を持つ人々に対して歯科のメンバーが歯の守り方を伝え、各歯の自衛活動を牽引できるリーダーの育成を行います。
②歯科と社会を繋ぐサードプレイス(第三の場)を作る
今現在、一般の方が歯科医師や歯科衛生士と会える場所は、主に歯科医院と歯科検診です。ハミガキ団は、歯科の専門家ともっと気軽に会えるサードプレイス(第三の場)を社会に作り、誰でも歯の健康管理に関する情報に触れられる、オープンな環境を整えます。
③様々な文化活動とのコラボレーション
日本では、歯の健康に対する価値観もまだまだ未成熟と言わざるを得ません。今わたしたちがすべき事は、政治家や歯科医師会など、「誰か」による変革を待つことではなく、わたしたち一人一人の力で歯を大切にする文化や空気感を作っていくことではないでしょうか。ハミガキ団は、スポーツ、音楽、食や美容など様々な文化とのコラボレーションを通じ、みなさんのオーラルケアがきちんと評価され、歯磨きで「モテる」ようになるための、クールなカルチャーを作っていきます。
最後に
ハミガキ団は、双方から見た課題解決のため、歯科業界のみならず、一般の方を巻き込んで行うソーシャルプロジェクトです。「歯の自衛組織」というコンセプトで、上記のミッションを達成するためにオンライン・オフラインを通じた歯の自衛活動のムーブメントを民間から作っていきたいと思います。参加方法は簡単、ハミガキ団のロゴマークを身に着けたり、SNSアイコンに設定し、自衛活動を行うだけです。各種SNSにてハッシュタグ #ハミガキ団 をつけ、是非ハミガキ団のプロジェクトに参加してください。私達の小さな一つ一つの自衛活動の報告が、社会を動かしていくのです。